今回の依頼は、紳士靴です。
なんと使い続けたいという革靴ですが、さわってみるともうガチガチに固くなってしまっていました。
理由は水に浸かってしまったという事でした。
革靴は水濡れに弱いですからねぇ・・
なんとか復活できるようにとい事で承りました。
思わず水たまりの中を歩いたり、最近で言えば、ゲリラ豪雨のような事が突然おきてどうすることもなく濡れてしまうという事もあると思います。
おそらくですが、水に浸かった後その状態で乾燥してしまったことで、油分が抜けてしまい革の組織がギュッとしぼんで縮んで固くなっていると思われる状態でした。
最初に軽く言いましたが、一般的に革靴は水に弱く、水に濡れてしまって革の中まで浸透してしまうと、革の繊維を柔らかくなったりします。
柔らかくなるとどうなるかというと、
水に濡れた重みなどで革が潰れるような感じにもなりやすく、革靴全体のシルエットもだらしなくなったりすることもあります。
また、水に浸かった後乾燥した時に油分が抜けてしまうと、
枯れた木のようにカチカチでガサガサゴワゴワしてしまいます。
全体的に傷んでしまっている感じもあったので、まずはできる限り汚れを落として、それから全体的に油分を塗り入れて少し時間を置いてを繰り返して革本来の状態に戻していきます。
この時に
- 削れてしまっているところ
- そうではないところ
- しわになっているところ
- 靴底に縫い合わさっているところ
などに合わせた塗り方をしていきます。
削れてしまっているところは、どうしても油分を強く吸収してしまったりするので、何度か重ね塗りをしたりなど、手間がかかります。
とは言え、ベタベタ塗ればいい訳ではなかったりします。
このあたりが、言語化しにくい職人の経験や技術が必要になるところかなと思います。
男性用革靴への油分入れ作業過程
マスキングをして塗ってはいけない箇所をカバーしたあと、軽く油分入れの作業をした状態です。
最初と比べるとだいぶん、カッチカチになった状態から柔らかさがでてきているのがわかります。
全体的に色も油分も抜けて乾燥しすぎてしまっています。
靴の側面はこんな感じで進めていきます。
しっかり塗り&乾燥を何度も繰り返してここまで革の風合いがでてきました。
ガサガサになって削れてしまっていた、足先部分も、綺麗な状態になりました。
この、削れてしまっていた部分と、そうではない部分の色調を平均化する事がとても難しく、経験がなければ、塗りすぎたり、塗りすぎることでボテっとした感じになってしまったりします。
そもそもの依頼される革の種類の特徴をしっかり理解しておかないと、完全におかしな色合いになって泣く泣く捨ててしまわないといけないくらい酷くなったりもします。
こればっかりは、
同じ革の素材で同じ靴だったとしても使用者様の扱い方によって微妙に状態が変わります。
私達技術者でも、どういうアプローチで綺麗にしていくのか?という事で悩む事があるくらいです。
というわけで今回も綺麗に革靴のリペアが完了致しました。
しっかりと革のハリやコシもある程度復元できた上で、履きやすい硬さに調整し、見た目の傷んだ箇所も綺麗になりました。
今回のご依頼の様に固くなった革靴をリペアでまた使えるようにしたいという方がもしいらっしゃいましたら、革の洗濯屋さんへご相談下さい。
ラインなどでのやり取りも可能ですし、お電話でも構いません。
一人でも多くの方に喜んでもらいたいなと思います。
という事で今回のご依頼ありがとうございました。